厚生労働省は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和7年度適用)」を公表しております。
(出典:厚生労働省ホームページ)
「労使協定方式」とは、派遣元において、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者と一定の要件を満たす労使協定を締結し、当該協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する方式です。
労使協定に定める「賃金」については、職業安定局長通知で示される、派遣労働者と同種の業務に同一の地域で従事する一般労働者の平均賃金と同等以上になるように決定するとともに、昇給規程等の賃金改善の仕組みを設ける必要があります。
〇能力・経験調整指数
〇一般通勤手当
「73円」
〇一般退職金
「5%」
詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和6年度適用)」の訂正に伴うリーフレットを作成し公表しております。
労使協定方式により派遣労働者の待遇を決定している派遣元事業主のうち、訂正前の「ハ ローワーク別地域指数」を参照して派遣労働者の賃金に関する労使協定を締結していた場合においては、以下の対応が必要となります。
・訂正後の「ハローワーク別地域指数」を用いた正しい一般賃金の確認を行う。
・確認の結果、一般賃金を満たさない賃金額となっている場合、これを満たすよう、労使で協議の上、令和6年9月30日までの間に労使協定の見直しを行う。
・労使協定の改定後、派遣労働者に対し、改定後の労使協定の周知と、変更後の労働条件の明示を行う。
リーフレットは、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和6年度適用)」の訂正に伴うQ&Aをホームページに掲載しました。
本Q&A は、誤りのあったハローワーク別地域指数を用いて、労使協定により賃金制度を設定されている派遣元事業主と、当該事業所に係る過半数労働組合、過半数代表者、派遣労働者(今年度に働いた経験をお持ちで既に離職された元派遣労働者を含む)の方及び派遣先事業主の方に参照いただくためのものです。
以下のようなQ&Aが掲載されております。(資料より一部抜粋、下線は筆者加筆)
・この度、訂正後の局長通達が公表されましたが、既に締結している労使協定はこの新しい局長通達の公表をもって無効となるのでしょうか。
(答)
・訂正前の局長通達の内容に基づく労使協定について、一般賃金通達(令和6年5月24日訂正)の公表をもって、無効となるものではありません。
・ただし、訂正後の一般賃金水準を満たすように労使協定を改定いただく取組を、一定の期日(令和6年9月30日)を設けて進めていただくこととした上で、都道府県労働局においては、個々の派遣元事業主の方の置かれた状況を踏まえながら、助成措置の活用を含めて丁寧にサポートさせていただくこととしており、こうした趣旨を踏まえ、経過措置期問中(令和6年9月30日まで)のできる限りお早めに、労使協定の改定をお願いいたします。
・経過措置期間中(令和6年9月30日まで)は、訂正後の一般賃金通達に基づく労使協定が締結されていなくても、行政指導等の対象とならない、ということでしょうか。
(答)
・経過措置期間(令和6年9月30日まで)は、労使協定を訂正後の一般賃金水準に基づくものに改定いただくための準備期間であるため、法違反にはならず、都道府県労働局による行政指導等の対象とはなりません。
・ただし、訂正後の一般賃金水準を満たすように労使協定を改定いただく取組を、一定の期日(令和6年9月30日)を設けて進めていただくこととした上で、都道府県労働局においては、個々の派遣元事業主の方の置かれた状況を踏まえながら、助成措置の活用を含めて丁寧にサポートさせていただくこととしており、こうした趣旨を踏まえ、経過措置期間中(令和6年9月30日まで)のできる限りお早めに、労使協定の改定をお願いいたします。
・経過措置期間中(令和6年9月30日まで)に労使協定を改定した場合、改定前に遡って当該協定の水準で支払う義務があるのでしょうか。
・令和6年4月1日から訂正後の一般賃金通達に基づいて労使協定を改定するまでの間について、 派遣元事業主は、改定後の労使協定との差について、どのように対応する必要があるのでしょう か。
・すでに契約を終了している元派遣労働者についてはどのようにしたらいいでしょうか。
(答)
・この度の厚生労働省の通達におけるハローワーク別地域指数の算定誤り及びその訂正を受けた労使協定の改定については、派遣元事業主の方に過失や責任があって行っていただくものではありません。改定前の期間については、その期間について有効な労使協定(現行協定)に拠ることになり、新協定の水準を年度当初に遡って適用することを義務とするものではありませんが、厚生労働省としては、今般の算定誤りがなければ年度当初から新協定の水準で協定が成立していた見通しや、労働の対価としての賃金の性質及び重要性を踏まえ、この期間における新協定と現行協定との差を補うことについて、労使の話し合いにおいて検討していただくようお願いをしています。また、この要請を受け、派遣労働者に当該差分の支払いを行う派遣元事業主の方への支援策として、人材確保等支援助成金(派遣元特例コース)を令和6年6月 28 日より創設しましたので、是非ご活用をお願いします。
・すでに契約を終了している元派遣労働者の方に対し差分を補うことについても、労使において検討いただくようお願いしています。この要請を受け、元派遣労働者の方に対し差分を支払う場合 も、派遣元事業主の方への支援策である人材確保等支援助成金(派遣元特例コース)の対象となりますので、是非ご活用をお願いします。
詳細は、以下よりご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001279067.pdf
厚生労働省は、第370回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の資料を公開しております。
資料1として、「労使協定の見直しを行う派遣元事業主への支援策について」が掲載されております。
ハローワーク別地域指数の誤り及びその訂正に伴い、派遣元事業主においては、訂正後の一般賃金水準を確認した上で、必要に応じ、労使協定の再締結を行うとともに、現行協定と新協定との差を補うことについて、労使で検討していくこととなります。
本支援策については、こうした通常であれば生じない年度途中での作業を追加的に行う派遣元事業主の負担を軽減する方策を検討する必要があることからその内容が検討されております。
〇支援の在り方について
ハローワーク別地域指数の訂正に伴い、派遣元事業主が 賃金制度の整備・改善等として、(1)の取組を実施した場合に、それに伴う経費について(2)のとおり助成することとしてはどうか。
(1)対象となる取組
訂正後の指数による一般賃金水準以上となるよう、労使協定を再締結するとともに、年度当初から協定再締結までの期間における差額(現行協定と訂正後の指数による一般賃金水準との差)を補う対応等としてはどうか。
(2)支援内容(助成額)
1 【支援内容(助成額)】
① 賃金制度の整備に係る基本経費 5万円
② 雇用する派遣労働者1人当たり1万円
ただし、①②の合計額を超えざるを得ない場合には、実費を上限として支給することがで きることとする。
※総額75,000,000円(試算)。
詳細は、以下よりご確認ください、
東京労働局公式チャンネルでは、派遣労働者の同一労働同一賃金について、2つの動画を公開しております。
・派遣労働者の同一労働同一賃金(入門編) 労使協定方式とは?
労使協定方式の以下の4つのポイントについて、簡単な説明を5分程度で行っております。
①労使協定方式は、派遣労働者の長期的なキャリア形成を考慮する。
②締結にあたっては、労働者の過半数代表を適切に選出する。
※あるいは過半数労働者で構成される労働組合が存在すること
③派遣法で定めれた事項は、必ず労使協定の中で定める。
④労使協定を作成・締結しない場合は、派遣先の通常の労働者の待遇を適用する、派遣先均等・均衡方式となる。
・派遣労働者の同一労働同一賃金(入門編) 派遣先均等・均衡方式とは?
派遣先均等・均衡方式の以下の3つのポイントについて、簡単な説明を5分程度で行っております。
①派遣先均等・均衡方式は、派遣労働者を派遣先の通常の労働者と同一の待遇にすることを目的としている。
②派遣先の通常の労働者に関する、すべての待遇情報の提供を派遣先から書面で受領しなければならない。
③受領した情報提供の内容をよく吟味し、不合理な差が生じることのないよう、派遣労働者の待遇を決定する。
動画は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、派遣先の皆さま向けの以下のリーフレットを掲載しております。
・派遣先の皆さまへ
・派遣労働者を受け入れる際に注意すべきポイント(同一労働同一賃金関係)
・派遣労働者を受け入れるために必要な対応があります!改めてご確認を
・派遣労働者の受け入れは派遣先にも責務が生じます
・派遣労働者の公正な待遇の確保、処遇の向上が求められています
今回、「派遣労働者の公正な待遇の確保、処遇の向上が求められています」が新たに追加されました。
リーフレットでは以下の内容が記載されております。
①「同一労働同一賃金」の実現が求められていることをご存じですか?
派遣先均等・均衡方式、労使協定方式について記載されております。
② 派遣元への情報提供と派遣料金の配慮をしていますか?
比較対象労働者の待遇情報の提供(法第26条第7項)、派遣料金についての配慮義務(法第26条第11項)、派遣料金の交渉に関する配慮義務等について記載されております。
③「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が策定されました
「労務費の適切な 転嫁のための価格交渉に関する指針」について記載されております。
④派遣労働者の直接雇用に、キャリアアップ助成金をご活用ください
詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、
ホームページを見直し、以下の資料を更新等しております。
〇派遣元の皆さま向けリーフレットを新規掲載。
・「厚生労働省編職業分類の改定により職業安定業務統計を用いた一般賃金は令和7年度適用分から新分類を使用します」
一般賃金(一般基本給・賞与等)は、賃金構造基本統計調査および職業安定業務統計を活用し、毎年度公表されています。このたび、職業安定業務統計に用いる「厚生労働省編職業分類」が改定されたため、職業安定業務統計を用いた一般賃金については、令和7年度適用分から改定後の職業分類を基に公表されます。
〇職業分類の解説を更新。
〇賃金比較ツール(令和5年度適用版・令和6年度適用版)を更新。
協定対象派遣労働者の賃金が、一般賃金と同等以上かチェックするためのツールです。
詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、「労使協定のイメージ」及び「「協定対象派遣労働者の賃金の額に関する確認書」のイメージ」を公表しました。
●「協定対象派遣労働者の賃金の額に関する確認書」のイメージについて
労使協定の有効期間中に一般賃金の額が変更された場合には、有効期間中であっても、労使協定に定める派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額であるか否かを確認することとされ、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額である場合には、派遣元事業主は、「同等以上の額であることを確認した旨の書面」を労使協定に添付することとされています。
詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、令和5年12月26日に開催された「第66回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」の資料を公開しております。
資料の中から、【資料2】同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組の実施状況について、是正事例が掲載されておりますので、一部抜粋してご紹介します。(下線は筆者加筆)
パート・有期法第8条、第9条により、同一企業内において、正社員とパート・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることを禁止されております。
〇パートタイム・有期雇用労働法の報告徴収の例:諸手当・福利厚生の是正事例
手当・福利厚生の性質や支給・付与目的に照らし、事案ごとに不合理な待遇差かどうかを判断。不合理と認められれば是正を指導。
●通勤手当
【支給目的】 通勤費用補填
【是正前の待遇】 正社員には実費を支給、有期は1日あたり定額を支給
【待遇差の理由】 有期は近隣からの通勤者が多く、通勤費用があまりかからないため (実際は遠方にも採用情報を掲載しており、自己負担している者あり)
・労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではなく、費用負担が生じていることからも同一水準で支給しないことは不合理な待遇差と判断。
➡正社員と同一基準での支給とするよう指導し是正
●慶弔休暇
【付与目的】 仕事から離れて慶弔行事に参加するため
【是正前の待遇】 正社員のみに付与、有期には付与されていない
【待遇差の理由】 職務内容が異なるから(正社員:非定型、有期:定型業務)(なお、正社員と同じ週所定労働日数であり勤務日振替は難しい)
・付与目的に照らせば、職務内容によって慶弔行事に参加するために労働から離れる機会を与える趣旨や時間が変わるものではないことから、不合理な待遇差と判断。
➡正社員と同一基準で付与するよう指導し是正
●精皆勤手当
【支給目的】 特定の業務に従事する従業員の皆勤を奨励するため
【是正前の待遇】 正社員のみに支給、パート・有期には支給していない
【待遇差の理由】 正社員はパート・有期よりも早く出勤し、その時間で正社員のみが行える特定の業務をしているため (ただし、特定の業務に従事しない正社員にも同様に支給)
・特定の業務に従事していない正社員にも手当を支給してい ることから、パート・有期に支給しないことは雇用形態を 理由とするものであり、不合理な待遇差と判断。
➡勤務日数・時間に応じ正社員と同一基準で支給するよう指導し是正
●食事手当
【支給目的】 食費の補助
【是正前の待遇】 正社員とフルタイム有期に支給、パートには支給していない
【待遇差の理由】 1日一定時間以上勤務する者を対象としており、パートはその時間数に満たないから(昼食時間を挟んで勤務するパートあり)
・食費の負担補助という目的に照らすと、食事をとる必要性については正社員も短時間パートも変わるものではなく、所定労働時間が短いことを理由とすることは、パートであることを理由とする不合理な待遇差と判断。
➡労働時間の途中に昼食のための休憩時間があるパートに対しても、正社員と同一の支給とするよう指導し是正
基本給や賞与と比較し、諸手当や福利厚生は、不合理な待遇差であると判断されやすいので注意が必要となります。
詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、以下、2種類のリーフレットを公開しております。
〇「派遣労働者を受け入れるためには必要な対応があります!改めてご確認を」
〇「派遣労働者の受け入れは派遣先にも責務が生じます」
〇「派遣労働者を受け入れるためには必要な対応があります!改めてご確認を」
派遣労働者を受け入れる場合、派遣元(派遣会社)だけでなく、派遣先においても、労働者派遣法に定められた措置を講じる必要があります。
リーフレットでは、以下5つの点について説明されています。
①契約前に、比較対象労働者の待遇等に関する情報を提供していますか?
②契約前に、派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知していますか?
③労働者派遣契約書に派遣法で定められている項目を全て記載し、かつ、毎 月1回以上、派遣元に対して派遣労働者の就業状況を通知していますか?
④派遣先管理台帳を作成、記載していますか?
⑤派遣先責任者を、派遣労働者数に応じた人数、選任していますか?
〇「派遣労働者の受け入れは派遣先にも責務が生じます」
派遣労働者を受け入れる場合、派遣元(派遣会社)だけでなく、派遣先においても、労働者派遣法に定められた措置を講じる必要があります。
こちらのリーフレットでは、セルフチェックリストを活用いただき、自己点検ができるようになっております。
詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和6年度適用)」を公表しました。
働き方改革関連法による改正労働者派遣法により、派遣元事業主は、
1「派遣先均等・均衡方式」(派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保)、
2「労使協定方式」(一定の要件を満たす労使協定による待遇の確保)
のいずれかの待遇決定方式により派遣労働者の待遇を確保することとされ、令和2年4月1日に施行されました。
このうち、2「労使協定方式」については、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」と同等以上であることが要件となっています。
一般賃金水準に用いる各指数等について、一般通勤手当と退職金割合について、以下に記載します。
〇「一般通勤手当」
令和6年度:72円(令和5年度:71円)
〇「退職給付等の費用の割合」
令和6年度:5%(令和5年度:5%)
その他、詳細は、以下よりご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001059098.pdf
昨日(令和5年7月20日)、名古屋自動車学校事件の最高裁判決が出されました。
本件は、自動車学校を定年退職した後に、嘱託社員として再雇用された際の基本給、賞与等の正社員との相違が労働契約法20条に違反するものであると主張し、不法行為等に基づき、相違に係る差額について損害賠償等を求めた事案です。
(原審の確定した事実関係の概要)
省略します。判決文をご確認ください。
(原審の要旨)※下線は筆者加筆
被上告人らの 基本給及び賞与に係る損害賠償請求を一部認容すべきものとした。
被上告人らについては、定年退職の前後を通じて、主任の役職を退任したことを除き、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲に相違がなかったにもかかわらず、嘱託職員である被上告人らの基本給及び嘱託職員一時金の額は、定年退職時の正職員としての基本給及び賞与の額を大きく下回り、正職員の基本給に勤続年数に応じて増加する年功的性格があることから金額が抑制される傾向にある勤続短期正職員の基本給及び賞与の額をも下回っている。このような帰結は、労使自治が反映された結果でなく、労働者の生活保障の観点からも看過し難いことなどに鑑みると、正職員と嘱託職員である被上告人らとの間における労働条件の相違のうち、被上告人らの基本給が被上告人らの定年退職時の基本給の額の60%を下回る部分、及び被上告人らの嘱託職員一時金が被上告人らの定年退職時の基本給の60%に所定の掛け率を乗じて得た額を下回る部分は、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たる。
(最高裁の判決)※筆者が判決文より抜粋し、下線を付す等の編集をしております。
原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1)労働契約法20条は、労働条件の相違が基本給や賞与の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得るものと考えられる。もっと も、その判断に当たっては、当該使用者における基本給及び賞与の性質やこれらを支給することとされた目的を踏まえて同条所定の諸事情を考慮することにより、当該労働条件の相違が不合理と評価することができるものであるか否かを検討すべきものである。
(2)ア 管理職以外の正職員のうち所定の資格の取得から1年以上勤務した者の基本給の額について、勤続年数による差異が大きいとまではいえないことからすると、正職員の基本給は、勤続年数に応じて額が定められる勤続給としての性質のみを有するということはできず、職務の内容に応じて額が定められる職務給としての性質をも有するものとみる余地がある。
正職員については、長期雇用を前提として、役職に就き、昇進することが想定されていたところ、一部の正職員には役付手当が別途支給されていたものの、その支給額は明らかでないこと、正職員の基本給には功績給も含まれていることなどに照らすと、その基本給は、職務遂行能力に応じて額が定められる職能給としての性質を有するものとみる余地もある。
前記事実関係からは、正職員に対して、上記のように様々な性質を有する可能性がある基本給を支給することとされた目的を確定することもできない。
嘱託職員は定年退職後再雇用された者であって、役職に就くことが想定されていないことに加え、その基本給が正職員の基本給とは異なる基準の下で支給され、被上告人らの嘱託職員としての基本給が勤続年数に応 じて増額されることもなかったこと等からすると、嘱託職員の基本給は、正職員の 基本給とは異なる性質や支給の目的を有するものとみるべきである。
しかるに、原審は、正職員の基本給につき、一部の者の勤続年数に応じた金額の 推移から年功的性格を有するものであったとするにとどまり、他の性質の有無及び内容並びに支給の目的を検討せず、また、嘱託職員の基本給についても、その性質及び支給の目的を何ら検討していない。
イ 労使交渉に関する事情を労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮するに当たっては、労働条件に係る合意の有無や内容といった労使交渉の結果のみならず、その具体的な経緯をも勘案すべきものと解される。
前記事実関係によれば、原審は、上記労使交渉につき、その結果に着目するにとどまり、上記見直しの要求等に対する上告人の回答やこれに対する上記労働組合等の反応の有無及び内容といった具体的な経緯を勘案していない。
ウ 以上によれば、正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとさ れた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま、その一部が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法がある。
(3)正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で賞与と嘱託職員一時金の金額が異なるという労働条件の相違について検討する。
前記事実関係によれば、被上告人らに支給された嘱託職員一時金は、正職員の賞与と異なる基準によってではあるが、同時期に支給されていたものであり、正職員の賞与に代替するものと位置付けられていたということができるところ、原審は、賞与及び嘱託職員一時金の性質及び支給の目的を何ら検討していない。
また、労働組合等との間で、嘱託職員としての労働条件の見直しについて労使交渉を行っていたが、原審は、その結果に着目するにとどまり、その具体的な経緯を勘案していない。
このように、上記相違について、賞与及び嘱託職員一時金の性質やこれらを支給することとされた目的を踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま、その一部が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法がある。
以上のとおり、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨をいう限度で理由があり、原判決中、被上告人らの基本給及び賞与に係る損害賠償請求に関する上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、被上告人らが主張する基本給及び賞与に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否か等について、更に審理を尽くさ せるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻すこととする。
判決文は以下よりご確認ください。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/208/092208_hanrei.pdf
厚生労働省の「多様な働き方の実現応援サイト」が、リニューアルされました。
本サイトは、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善や、正社員の働き方の多様化に役立つ情報をお届けするものです。
以下のような内容について掲載されております。
◆パートタイム・有期雇用
正社員との不合理な待遇の解消(同一労働同一賃金)や正社員への転換への支援について紹介されております。
〇正社員との不合理な待遇差の解消
・法律のポイント
・解説動画
・法対応チェックツール
このパートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツールでは、パートタイム・有期雇用労働法やその他の労働関係法令により義務・努力義務とされている事項について、貴社の取組状況を点検し、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善に向けて、どのように取り組むべきかを確認することができます。
・参考判例
・職務分析・職務評価
都道府県働き方改革推進支援センターでは、職務分析・職務評価の手法をご理解いただくための取組支援を行っています。【無料】
当サイトでは、職務分析・職務評価についての解説や関連資料が紹介されています。
・事業主の方への支援
・労働者の方へ
〇公正な待遇の確保に向けた企業の取組事例
パートタイム労働者・有期雇用労働者がどのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるよう、公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)に向けて取り組んでいる企業の取組内容や効果などを紹介するサイトです。
〇無期雇用・正規雇用への転換
有期雇用で働く方が、労働契約が更新されて契約期間が通算5年を超える時に、無期雇用になることを希望して「無期転換」の申込みをした場合、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される、という無期転換ルールがあります(労働契約法18条)。無期転換ルールの内容について参照サイトが記載されております。
◆多様な正社員
職務、地域、時間を限定して選択できる正社員について紹介されております。
〇多様な正社員とは
・職務限定正社員
・勤務地限定正社員
・短時間正社員
・週休3日制
〇多様な正社員制度の導入事例
企業名をクリックいただくと多様な正社員制度導入の背景等の詳細をご覧いただけます。事例詳細検索で業種、企業規模等で絞込検索も出来ます。
その他、セミナー情報やよくある質問なども掲載されております。
以下よりご確認ください。